神鹿
神鹿

神鹿

 

奈良ホテル方向から四季亭を右に曲がって浮見堂への道は現代といにしえを繋いでいるかのようだ。遠くに池が見える辺りから両脇の木々が覆い被さるようになり、日の光が届かない薄暗い道を歩いていると突然鹿に気付いたりする。ここでは人間が侵入者だ。崩れかけた土塀の傍らにふとシルエットになった鹿の姿が浮かび上がる。神の使いと言われる鹿が薄暗い中にある種の威容を持って見え、「お邪魔してすみません」と心の中で謝ったりする。木々の間を抜けるとぽっかりと開かれた空間に池に映えた浮見堂が見えた。